好きよ、でんじろう

初恋

初恋を 初めてのときめきと 定義するなら
私の初恋は 彼 

「でんじろう」

彼は 私と同い年 物心付く前から 彼を知っている 
彼は 私の世界を広げてくれた 初めての友達
彼は 私と同じ時を生きているのに 
彼は 私のずっとずっと先を行く 孤高の存在
彼は その気高さ故に 近寄りがたい空気をまとっていた
彼は 幼馴染の仲間内でも 一目置かれる存在
彼は 人をいじめない 人にいじめられない 品格を持っていた 
しかし
彼は 誰にも 心を許さなかった 
彼は 友達を 作らなかった
彼は 私を 友達とは認めてくれなかった
それでも
彼は 私の 初めての友達

近所の駄菓子屋で お気に入りの煎餅を買った 帰り道 
家の前で ひとりたたずむ 彼を見かけて 声をかけた

「でんじろう、この煎餅、一緒に食べない?」

彼が 返事を返さないのは いつものこと
そんなことは 分かってる 彼の世界に 私はいないって 
そんなことは 分かってる 彼の一途は 揺るがないって
そんなことは 分かってる 分かってるけど・・・

「はい、どうぞ、おいしいよ」

彼は 差し出した煎餅に 見向きもしない
プイッと そっぽを向いて 遠くを見つめている

愛しいあの人を 待っているのね
いいの いいのよ それでいいの
あなたの邪魔はしないわ
私は都合のいい女で 全然かまわないから
だから ねえ お願い 
こっち 向いてよ でんじろう

でんじろう


「でんじろう、あんたの忠義、やっぱかっこいいわ・・・」

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